ここまで4回にわたって、食いしばりを脳と神経のはたらきから見てきました。最終回は、ご自身の顎がいまどうなっているかを確かめるところに戻ります。尼崎市武庫之荘の整体院ファシリテイトからお届けする、食いしばり連載の最終回です。
食いしばりのやっかいなところは、自覚が出にくいことでした。だからこそ、力が入っているかどうかを直接感じ取ろうとするのではなく、残っている痕跡を拾うほうが確実です。以下の11項目は、そのための観察の手がかりです。
この記事の要点
・食いしばりは自覚が出にくい。力を感じ取ろうとするより、朝・日中・夜に残る痕跡を拾うほうが確実
・日中に上下の歯を軽く触れ合わせる癖は、慢性的なあごの痛みが長引く要因として日本の研究で報告されている
・何項目当てはまったかより、どの場面に偏っているかが手がかり。1週間の記録で対処する場所が絞れる
朝に確かめる5項目
なぜ朝に確かめるのか
眠っているあいだに咀嚼筋が働き続けていた場合、その結果は朝にいちばん強く残ります。第2回でお伝えしたとおり、夜の噛みしめは眠りが浅くなる瞬間に集中して起き、本人は覚えていません。だから朝の体に残った痕跡が、いちばん確かな手がかりになります。目が覚めてから顔を洗うまでのあいだに、次のことを確かめてみてください。
1. 起きた時点で顎が重い、または頬の外側が張っている
夜のあいだに咀嚼筋が働き続けていた場合、朝がいちばん重くなります。昼に向けて軽くなっていくなら、なおさら夜の影響が考えられます。
2. 起床時にいちばん頭が痛い、こめかみが締めつけられる
時間とともに軽くなる頭の痛みは、夜のあいだの筋肉の活動と重なって現れることがあります。こめかみには、顎を閉じる側頭筋が広がっています。
3. 頬の内側に、歯が当たった跡が白い線のように残っている
上下の歯を強く合わせていると、その内側の粘膜が歯列に沿って押されます。
4. 舌のふちに、波打つようなギザギザの跡がある
舌を上あごや歯に押しつける癖があると、歯列の形が舌に写ります。
5. 口を開けようとすると、最初の動き出しが固い
眠っているあいだ長時間同じ位置で力が入っていた場合に起こりやすい状態です。
日中に確かめる4項目
歯が触れている時間はどのくらいが普通か
本来、口を閉じて力を抜いているとき、上下の歯は触れていません。1ミリから3ミリほどのすき間が空いているのが自然な状態です。噛む力がどこで決まっているのかは第1回で詳しくお伝えしました。
ところが、日中にこのすき間がなくなり、上下の歯を軽く触れ合わせたままになっている方がいます。東京医科歯科大学の研究グループはこれを歯列接触癖(TCH)と名づけ、慢性的な痛みのある顎関節症の方229人を調べました。その結果、52.4%にこの癖があり、癖のある方は初診後に痛みが改善しにくかったと報告しています(Sato ら, Journal of Medical and Dental Sciences, 2006)。
強く噛みしめていなくても、軽い接触が長く続くだけで負担になる。日中の4項目は、この点を確かめるためのものです。仕事や家事の途中で、ふと意識を顎に向けてみてください。
6. 気づいたときに上下の歯が触れている
触れていることに気づいた時点で、それは接触の習慣がある合図です。
7. パソコンやスマートフォンを見ているとき、口元に力が入っている
画面に集中している時間は、噛みしめが起こりやすい代表的な場面です。同じ研究では、細かい作業をする方にこの癖が多い傾向も示されています。
8. 頬の外側を指で押すと、左右で固さが違う
耳の少し前、奥歯を噛んだときに盛り上がるところが咬筋です。左右差は、噛む力の偏りを映します。片側でばかり噛む癖も、この接触癖と関係していたと報告されています。
9. 硬いものを食べたあと、いつまでも顎がだるい
使ったあとの回復に時間がかかるのは、もともとの張りが高いまま使っているためと考えられます。
夜と歯科で確かめる2項目
10. 家族に歯ぎしりの音を指摘されたことがある
音が出るのは顎を横にずらす動きを伴う場合で、上下に押しつけるだけの噛みしめは無音です。音を指摘されたことがあるなら、より確かな手がかりになります。指摘されたことがないからといって、噛みしめていないとは言えません。
11. 歯科で、歯のすり減りや詰め物の欠け、知覚過敏を指摘されたことがある
歯という硬い組織が削れているとしたら、それだけの力が繰り返しかかったことを示しています。マウスピースの役割については第4回で扱いました。
当てはまった数より、大事なこと
どの場面に偏っているかで見方が変わる
いくつ当てはまったかで重さが決まるわけではありません。見ていただきたいのは、どの場面に偏っているかです。
朝に集中しているなら、眠りの浅さと自律神経の立ち上がりが関わっている可能性があります。日中に集中しているなら、姿勢と集中の場面がきっかけになっているかもしれません。頭痛や肩こりが重なっているなら、第3回でお伝えした顎と首のつながりから見ていく必要があります。
そして11番のように歯に痕跡が出ている場合は、まず歯科にご相談ください。歯そのものを守る手当ては、歯科の担当です。
頬や舌の跡だけで判断できないのはなぜか
項目3と4の頬や舌の跡については、少し補足が必要です。
起きているあいだの食いしばりを調べた研究では、頬の内側の跡や舌のふちの跡がある方に、日中の食いしばりが多いという関連が見られました(Hilgenberg-Sydney ら, Dental Press Journal of Orthodontics, 2022)。一方で、頬の跡は歯並びの混み具合で、舌の跡は舌そのものの大きさでも生じるとする報告があります。
つまり、跡があることは手がかりにはなりますが、それだけで食いしばりだと決めることはできません。1つの項目で判断せず、場面ごとの偏りを見るのはこのためです。
1週間だけ記録してみる
もしできれば、1週間だけ記録してみてください。毎朝、顎の重さを10段階で書き留めるだけで構いません。
数字そのものより、重い日の前日に何があったかが見えてきます。残業が長かった日、人前で話した日、寝る時間がずれた日、お酒を飲んだ日。偏りが分かると、対処する場所がひとつに絞れます。
ご相談にお越しいただく際も、この記録があると話が早く進みます。その日の状態だけでなく、どういう日に強くなるのかという情報が一緒に届くからです。
神経から整えるという選択
歯を離す意識だけでは足りない理由
上下の歯を離す意識を持つことは、今日からできる大切な習慣です。先ほどの研究も、この癖を自覚して減らすことの大切さを示しています。
ただし連載を通してお伝えしてきたとおり、意識で抑えられるのは自分で出す指令の部分で、筋肉がどれだけ張りを保っておくかという基準は別のところで決まっています。注意を向けた瞬間だけ力が抜け、注意が外れれば戻る。食いしばりは意志の弱さの問題ではありません。
当院がみているところ
整体院ファシリテイトでは、顎そのものを強く押すことはしません。口の開け閉めの軌道、左右の噛む筋肉の張りの差、頭がどこにのっているか、首から上の力の入り方を確かめながら、神経の伝わり方がどこで乱れているかを評価していきます。そのうえで、やわらかいタッチで咀嚼筋と頭頸部の過緊張がゆるむ方向をさがしていきます。あごの症状全般は顎関節症・あごの痛みのページにまとめています。
施術を行う北村隆行は、臨床歴22年(うち理学療法士として医療機関で18年)の経験を持ちます。リハビリテーション科科長や勉強会講師を務め、精神科・スポーツリハビリ・デイサービス・訪問リハビリなど幅広い現場で臨床を重ねてきました。現在は神経整体T-Group認定講師として全国6会場で施術者への技術指導にあたり、2024年12月には第7回大阪呼吸ケア・リハビリテーション研究会に実習アシスタントとして登壇しています。なぜそうなっているのかを神経のはたらきからご説明できることを、いちばん大切にしています。
尼崎市武庫之荘でご相談を
当院へのアクセス
当院は阪急武庫之荘駅の北側から徒歩2分、尼崎市武庫之荘1丁目のバロンガーデン武庫之荘101にあります。目の前にコインパーキングがあり、自転車やバイクでもお越しいただけます。道順はアクセスのページに写真つきで載せています。
尼崎市内はもちろん、阪急神戸線沿線の塚口・園田・西宮北口方面、伊丹市や宝塚市からお越しいただく方もいらっしゃいます。
初めての方へ
営業は月曜から土曜の10時から20時まで、日曜・祝日が定休です。完全予約制の個室ですので、あごのことも、眠りのことも、落ち着いてお話しいただけます。ネット予約は24時間受け付けており、空き状況はその場で確認できます。初回の流れは初めての方へをご覧ください。
あごの痛みが強い、口が指2本分しか開かない、歯のすり減りが進んでいる。こうした状態が続く場合は、まず歯科・口腔外科にご相談ください。
何年も続いている朝の顎の重さも、経過が長いからという理由であきらめていただく必要はありません。お気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 当てはまる項目が多かったのですが、まず何をすればいいですか
A. 歯のすり減りや欠け、口が開きにくいといった様子がある場合は、まず歯科・口腔外科で歯と関節の状態を確かめてください。そのうえで、噛む筋肉の張りや首から上の力の入り方が気になる場合は、当院で併せてご相談いただけます。今日からできることとしては、上下の歯が触れていることに気づいたら離す、という意識づけがおすすめです。
Q. 歯科に通っていても整体に行っていいですか
A. はい、併用できます。歯や関節の手当ては歯科の担当で、当院は咀嚼筋の過緊張や頭頸部の姿勢、神経の過敏さに着目したケアを行います。役割が違うので、どちらかを選ぶ必要はありません。
Q. 駐車場はありますか
A. 当院専用の駐車場はありませんが、目の前にコインパーキングがあります。自転車やバイクでもお越しいただけます。阪急武庫之荘駅の北側からは徒歩2分です。
Q. 予約はどうすればいいですか
A. 24時間受け付けのネット予約が便利です。空き状況がその場で確認できます。LINEやお電話でもご予約いただけます。完全予約制のため、ご予約のうえお越しください。
Q. どのくらい通う必要がありますか
A. 症状の経過の長さや生活の場面によって変わるため、初回にお身体を確かめてからご説明しています。当院は基本的に毎週の来院をおすすめしており、4回目がちょうど1か月後になります。そこが通い方を見直す区切りになります。
参考にした研究
Sato F, Kino K, Sugisaki M, et al. Teeth contacting habit as a contributing factor to chronic pain in patients with temporomandibular disorders. Journal of Medical and Dental Sciences. 2006;53(2):103-109.
Hilgenberg-Sydney PB, Lorenzon AL, Pimentel G, Petterle RR, Bonotto D. Probable awake bruxism – prevalence and associated factors: a cross-sectional study. Dental Press Journal of Orthodontics. 2022;27(4):e2220298.
📍 阪急武庫之荘駅 徒歩2分 整体院ファシリテイト 完全予約制
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